良い提案とはお客さまが欲しいといったものを与えることではない
自宅の庭が地面むき出しで雑草ぼうぼうになっているのを仕事の忙しさにかまけて、ここ何年も手つかずにしてきました。まあ、ガーデニングの才もないこともあり、、
さすがにこのままではという状態になったので、思い切ってエクステリア&ガーデニング専門の業者さん2社から提案をもらうことにしました。
手を付けると決めると想いは膨らみます。小さい庭ではあるけど、イタリアのトスカーナにある田舎の庭調にしたいなぁと思い始めました。
こんなイメージです。
業者さんにも写真をいろいろと見せてやりたいことを説明して提案をお願いしました。
で、それぞれから提案があがってきました。
まず片方の業者さんからは、私がいった「欲しい」という要素をすべて盛り込んだご提案をいただきました。庭の中央にはオブジェ、壁にはイタリアの水栓、オーニング(日よけ)などなど。
そのご提案から一週間後にもう一方の業者さんが来られてご提案を見せていただいたら、
「えっ?」
という感じ。
ザ・シンプルで、いまあるテラコッタ色のタイルをいかして、あとは芝生とプラントですっきりと見せるという提案でした。
こっちの要望は聞いていたのかといささかむっとしながら
「芝生はこれまで何回もやってみましたが大きな木があり影になるので無理だとお伝えしましたよね」と突っ込むと
「それはお伺いしましたが、実は芝生がはえなかったのは日陰になっていたというよりも、このように木が育っていると木の根っこが地面の下にはびこっているために、芝生が育たなかったのです。ですので、ここの土をさわらなければ何を植えても育ちません。砂を大量にいれることで、芝生が育つ環境をまず作ってやります。ゴルフ場も同じことなんです。」
と説明いただきました。
さらに、
「いろいろとご要望はお伺いしたのですが、玄関の部分のデザインや家との調和を考えると、あまりやりすぎると合わないと思います。イタリア的要素をテラコッタの壺等でうまく見せることで、バランスとれた空間になると思いました。また、多くの植物を植えても、結局1年後のメンテを考えるとその時はいいのですが、1年後になくなってしまっている可能性が大きいと思います。まずはこの案をたたき台にして、徐々にご一緒に作っていければと思いまして。」
きちんとした理由を聞いて、よくよく考えてみると確かにそうだなと思い始めてしまいました。その後、いろいろとQ&Aを繰り返して、ある程度の合意ができたので、改めて見積もりを頼むことにしました。
さて、この2つの提案で、どちらにより心が動いたか。
実際は、後者でした。
お客様が自分の本当に欲しいものをわかっていない場合もあるわけで、専門家としては、そのお客様が潜在的に必要で欲しいものを見つけ出して提案する営業をしてこそ、専門家がプロである所以であり、また結局顧客満足につながるのではないかと思った次第です。
もちろん、そのような提案をしても、お客様にわかってもらえない場合も多々あるわけで、結局自分の欲しいといったものをすべて提供するといっている業者を選択することもあるため、リスクはあるのですが、顧客の立場に立って考えるプロというのは、そのようなリスクも負うべきであろうと思いました。
良い提案とは、必ずしもお客様が欲しいといったものを全て与えることではなく、お客様が自分で気が付いていないような隠れたニーズやウォンツを見つけ出して提案することかと。